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将棋格言は役立つ?役立たない?


(本ページの内容)
 初心者向けから有段者向けまで、レベルはいろいろ  大げさで信用できない格言は気構えを表したもの
 序盤の格言は時代と共に消滅していく?  手筋や終盤に関する格言は「永久不滅」
(次ページのテーマ) 駒の使い方や手筋、寄せに関する格言

 

 将棋に関する格言は、百種類以上はあろうかと思われますが、あなたはいくつご存知ですか? 多少勉強した方なら、「桂の高跳び歩の餌食」とか「歩のない将棋は負け将棋」などはどこかで見聞きしたことがあるのではないでしょうか。この二つについては後で解説しますが、格言には役に立つ格言もあれば、さほど役立たない格言もあり、理解の仕方によってはマイナスになりかねないものも一部に見られます。

 ここではそうした格言をさまざまな角度から分類し、役に立つか立たないかという観点から考察してみようと思います。

初心者向けから有段者向けまで、レベルはいろいろ

 将棋の格言には駒の名が入るものが多く、それだけ個々の駒の特性や使い方、手筋に関する格言が多いということです。そこで早速、冒頭に掲げた二つの格言「桂の高跳び~」と「歩のない将棋~」について考えてみましょう。前者は明らかに初心者向け、そして後者は初段近くにならないと、ピンと来ないかもしれません。
 格言の中には有段者向けと思われるものもありますが、それはまたページを改めて…。

桂の高跳び歩の餌食

 初心者はなぜか序盤に、何の当てもなく桂馬を跳ねたくなるようです。結果、桂頭に歩を突かれ(あるいは打たれ)、タダで取られてしまう場面をよく見かけます。一方、強い人が桂を跳ねる場合は他の攻め駒と連携しますから、相手に取る暇を与えません。桂が取られる間に敵陣にダメージを与え、突破を図ります。矢倉や相掛かり、端攻めなどに桂馬は活躍しますが、手順や変化に難しいものがあります。

 この格言は初心者向けに「むやみに桂馬を跳ぶな」と言っているだけで、桂馬の適切な使い方については何も言っていません。さほど役に立つとは思えません。

歩のない将棋は負け将棋

 この格言は、歩を使った多彩な手筋を知らない初心者には、理解しがたいものかもしれません。強くなればなるほど、歩のない苦しさを実感するわけですが、それにしても「負け将棋」とまで断定するのは少し大げさに思えます。

大げさで信用できない格言は、気構えを表したもの

 先の「歩のない将棋は~」を別の角度から表現した言葉に、「一歩千金」があります。確かに、「手に一歩あれば勝てる」という局面もあるでしょうが、特殊なケースです。この格言は、最も弱い駒である歩の大切さを、最大級に表現したものと考えるべきでしょう。
 次に同様の大げさな格言を2つ挙げておきましょう。

二枚換えなら歩ともせよ

 二枚換えとは普通、大駒(飛車・角)一枚と、金・銀・桂・香二枚とを交換することを指します。「大駒の威力は強大だが、小駒二枚を手に持つ方が有利であることが多い」という意味ですが、それどころか「小駒の片方が歩でも、迷わず二枚換えをすべきだ」と煽っているわけです。でも本当にそうでしょうか?

 各駒の能力を谷川式(浩司九段)で点数化すると、飛車(10点)、角(8点)、金(6点)、銀(5点)、桂(4点)、香(3点)、歩(1点)となります。すると、角一枚と「金+歩」二枚の交換は〔8点対7点〕となり、角を取ったほうが有利ということになります。もちろん、局面によってはその限りではありませんが、一般論としては「歩ともせよ」は額面通りには受け取れません。二枚換えの格言は、チャンスに大駒を切ることをためらう、初心者へのアジテーションと考えられます。

王の早逃げ八手の得

 
 この格言は、終盤で自玉が攻められているとき、王の周囲を補強するよりも、「さっさと広いほうに早逃げしたほうが、手が伸びて安全だ」という意味です。もちろん状況にもよりますが、敵の攻め駒の手薄な上部に逃げられれば、攻めを大幅に遅らせる可能性が生まれます。

 とはいえ、「八手の得」は大げさです。プロの将棋は一手違いが常識。アマでも有段者では、二手違えばもう大差の将棋です。八手とはどういう計算なのか? 八には「たくさん」という意味や、「めでたい数字」というイメージはありますが…

序盤の格言は時代と共に消滅していく?

 プロの世界では、将棋の定跡は日進月歩です。つい数年前まで有力だった戦法が急に指されなくなったりもします。序盤の研究はパソコンの普及時代に、当時の若手棋士が棋譜のデータベースを活用して定跡の研究を始めたことで、急速に進みました。さらにAI(人工知能)の登場と相まって、新手の研究はさらに加速したのです。そのため次の例のように、序盤の作戦に関連した古い将棋格言のいくつかは、役に立たないものとなりました。

振り飛車には角交換を狙え

 かつて、角道を止める振り飛車戦法に対しては、「☗4五歩早仕掛け」などの角交換を目指す戦法が有力でした。今でも有効な戦法の一つとして残ってはいますが、プロの将棋ではほとんど見かけません。逆に、振り飛車側から☖4五歩と角交換を狙う戦法が出現し、居飛車側が角交換を拒否する戦法が生まれたりして、角交換を巡る常識は大きく変わりました。「角交換を狙え」はもはや格言の体をなさなくなったのです。

 図は初手からお互いに角道を開け、飛車先の歩を交換した場面。次に☗3四飛と歩を取れば難解な「横歩取り」に突入です。そこで後手も同様に☖7六飛と横歩を取るのは危険。2二角成と角を取られた後、ひどいことになります(並べてみればわかります)。 

横歩三年の患い

 横歩取り戦法はアマ有段者でもうっかり手を出せない、華々しくも難しい戦法です。その昔、横歩を取る側の飛車が不自由になるため、「三年患う」と言われていました。それが格言誕生の由来です。その後、新手が生まれて横歩を取る側の勝率が良くなり、三年患うのは後手側となりました。こうして、勝率の悪い側が有力な新手を発見する度に、何度か立場が入れ替わって現在に至っています。横歩取りはどちらを持っても超難解で、アマ向けの格言として成り立ちにくいテーマです。

5五の位は天王山

 昭和の振飛車全盛時代に猛威を振るった四間飛車に対して、先手が5筋の位を取る戦法は有力でした。しかし、今では5筋に限らず、位取り戦法を最初から目指す持久戦は影をひそめました。あまり役に立たない格言といえるかもしれません。

手のないときは端歩を突け

 序盤の駒組みに関するこの格言も、今ではあやしい格言となっています。序盤研究が進んだ現代では、プロは「手のないとき」などというあいまいな理由で端歩(はしふ)は突きません。端歩を突くタイミングには、もっと深い意味がありそうですが、アマにはあまりに難しい問題。いずれにしても何気ない端歩突きは、局面によっては相手に攻めの糸口を与えることになりかねません。

序盤は飛車より角

 「序盤は飛車より角」は戦型にもよります。初心者には、角の使い方を身につけてからでないと納得できない格言かもしれません。駒を並べる段階で飛車と角を交換して対戦したら、やはり飛車2枚のほうが強いのでは…? 「そういう場面も少なくない」という程度に考えておいたほうがよさそうです。

手筋や終盤に関する格言は「永久不滅」

 ここまで「役に立たない格言」ばかりをあげつらってきましたが、格言の持つ力を否定するのが本意ではありません。駒の使い方や部分的な手筋に関する格言、終盤の寄せに関するセオリーなどを表わした格言は、永久不滅であり、上達する上でも大変役立つものです。そこでページを改めて、「将棋のセオリー、駒の使い方、寄せに関する格言」というテーマで、初段をめざすための格言を紹介しましょう。

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