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 好きな将棋の駒と性格、棋風

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好きな将棋の駒と性格、棋風
     一流棋士の場合は…?

あなたは最強の駒=飛車が一番好きですか? それとも…

 

 駒の使い方を覚え、実戦で特定の駒が活躍するようになると、その駒が好きになるのが人情です。そのため、たいていの初心者は最初に「飛車」が好きになります。

 でも、「ヘボ将棋、王より飛車をかわいがり」という句の面白さが分かる人は、胸を張って「好きな駒は飛車!」とは言いづらいですね。

 ところがあるプロ棋士は堂々と「飛車」と答えています。最も強力な駒である飛車が好きなのは、実に自然なことです。では、飛車以外の駒を口にするのは、素直ではないのでしょうか?

好きな駒はその人の性格や、あるべき姿を表している?

 なぜアマプロを問わず多くの人が、「飛車が一番好き」と言わないのか? それは、「一番好きな俳優(女優)」を聞かれて、「演技力」で選ぶ人が少ないのと同じことです。人は「一番強い駒」ではなく、「働き方が一番美しいと感じる駒」を選ぶのです。「美しい」は、「格好いい」とか「けなげだ」という言葉に置き換えてもよいでしょう。

 つまり、特定の駒に感情移入しているわけで、「好きな駒」はその人の性格またはあるべき姿を表していると考えることができます。ですから、その辺を調査、分析してデータ化すれば、「好きな駒・性格占い」ができるかもしれませんね。星占いや血液型占いよりははるかに科学的で、当たる確率が高まるはずです。

一流棋士の好きな駒は金・銀・桂‥‥

 筆者と同い年の中原誠十六世名人は、桂馬が好きなことで有名でした。「銀桂交換なら桂の方が得」と言ったとか‥‥。私も桂馬が好きですから、その気持ちはわかります。桂馬は唯一、他の駒を飛び越すことができるので、派手目の性格の人が好きになるのかというと、どうも違うようです。むしろ思慮深くて慎重な人が、力をためながら桂馬の出番をうかがうのです。ちなみに、佐藤康光九段も、好きな駒を桂馬と答えています。

 一方、銀将が好きだと答えたのはあの羽生さんです。銀は攻守の要だという理由で、やはり棋風的にも人間的にも、バランスの取れた方なのでしょう。なお、史上初の中学生棋士で、神武以来の天才と謳われた加藤一二三九段も、銀将を選んでいます。鋭角的に前に出るのがお好きなようで、棒銀に代表される加藤流の戦法にそれが現れています。同じ駒が好きでも、その理由が異なるところが面白いですね。

 

 銀将が出たところでついでに金将ですが、昔の将棋ファンなら誰かすぐにわかりますね。故大山康晴十五世名人です。ご本人は「香車が好き」とはぐらかしていたようですが、本音は誰が考えても決まっています。離れていた金がいつの間にか王のそばまで来ていたり、時には金が攻撃に参加したりして、金遣いの名手として知られていました。

 大山名人は守りに強い棋風で、顔まで金将のように見えたのは私だけではないはず。中原ファンとしては、あの固い岩盤を崩すのは、当時「若き太陽」と言われたこの人しかいない、と思ったものです。

 最後に、大駒を選んだ棋士ですが、飛車は、渡辺明棋王と森内俊之九段、角行谷川浩司九段です。働きの大きい駒という点も考慮した選択で、金、銀、桂などを選ぶのとニュアンスが異なります。ただし、飛車か角かという選択なら、性格や棋風が現れるかもしれません。

番外編

 好きな駒を人に尋ねるとき、「ただし、王将は除外する」ということは暗黙の了解事項となっています。でも、念のためそれを言っておかないと、「一番好きなのは王将」と答える方がいないとも限りません。どなたか忘れましたが、ある一流棋士が「王将」と答えたという記事をどこかで見た記憶があります。確かに、王を取られたらそれでおしまいですから、理にかなっていますが、質問者も意表を突かれたことでしょう。

 真面目に答えた結果なのか、それとも「そんなつまらない質問はするな」という言外のシグナルだったのか? 状況が分からないので何とも言えないのですが、筆者にはある種のユーモアのように感じられます。


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