やさしい必至のかけ方(詰めよりも必至)
必至とは?
将棋の終盤では、相手玉が詰まないのにむやみに王手をかけるのは、たいてい失敗に終わります。相手を追い詰めるチャンスを逃してしまうばかりでなく、駒を渡したり自玉の安全に影響が出たりして、形勢が逆転することはよくあることです。
そこでおすすめするのが、「必死のかけかた」を知っておくことです。将棋では、「次に詰ましますよ」という手(詰めろ)の方が、良い手になることが多いものですが、その「詰めろ」が「どう受けても詰まされる状態」になっていれば理想的です。それが「必至」です。必至をかけられたほうは、相手の玉を即詰めにしない限り、負けになります。
前置きが長くなりましたが、ここで必至とはどういう状態なのかを、簡単な図で説明しておきましょう。
1図 2図 |
左図 一目で即詰めがないのはわかりますね。そこで自玉が詰まなければ、詰めろをかければよいわけですが、実はこの場面、先手は必死をかけることができるのです。寄せの基本ともいうべきやさしい例題です。
まず、失敗例から。☗3一銀は攻めの定番ですが、☖2三玉と逃げられて失敗に終わります。☗2二飛成には☖1四玉と上部へ脱出され、もう詰みはありません。
2図 正解は☗3二飛成と迫る手で、龍の力を最大限に生かします。☖2三玉と逃げる手を防ぐと同時に、次に☗2三銀と☗2一銀を見合いにしています。
この後、後手が☖3一金などと守れば☗2三銀。☖1四銀で2三の地点を守れば、☗2一銀まで。
また、☖1三歩と逃げ道を作るのは、☗2三銀、☖1三玉、☗2三龍まで、やはり詰みます。
自玉に即詰めがなければ、必至をかけて勝つ
終盤も煮詰まって、「詰ますか詰まされれるか」という緊迫した場面で自分の手番を迎えたとしましょう。このとき誰でも考えるのは、「相手玉を詰ませたい」ということですが、考えられるのは次の3つのケースです。
①相手の玉を詰ます手順が見つかる
②現段階では、相手の玉に即詰めがないことが分かる
③詰むような気がするが自信がない。あるいは詰むか詰まないか、まったく分からない。
①のケースでは、相手側からうまい受けがないかを確認したうえで、詰ませに行きます。
②のケースでは、次に自玉に即詰めがあるかどうかを考えます。危ないと思えば、受けに回ります。出来る限り攻めを遅らせる手を考えますが、時には守る手が同時に相手玉への攻めに役立つようなうまい手が見つかれば理想的です。
また、自玉に即詰めがなければ、相手玉に必至がかかるかどうかを考えます。必至が見つからなければ、「詰めろ」をかけながら、チャンスを作ります。
③のケースでは、リスクを冒して即詰めを狙う必要はありません。わからないときはひとまず「詰まないもの」として、②のケース同様の対応をします。
必至の基本問題(3問)
それぞれ、一手で必至をかけてください。よく見かける、必至の基本問題です。
第1問 |
第2問 |
第3問 |
【ヒント】 第1問:直接の手がかりはありませんが、上部に逃がさない手を考えます。 第2問:玉を上部(1三)に逃がさない手 第3問:必至問題でなければ、寄せの常識として普通に思い浮かぶ手ですが、その後の後手の抵抗に対する詰めを、すべて読み切ってください。 |
正解と解説
第1問正解 ☗2三銀 3図 |
4図 |
3図 玉の頭の上に銀を打つのが正解で、次に頭金を狙っているのは言うまでもありません。後手は2二に金を打って守るしかありませんが…
4図 前図から、☖2二金、☗3三桂、☖3一玉、☗4一金まで詰みます。☗3三桂のとき、☖1一玉と逃げるのは☗2一金、☖同金、☗同桂成、☖同玉、☗2二玉まで。手数は長くても一本道です。
ちなみに、この問題は玉の位置が3一と左に一つズレただけで、詰まなくなります。初手から☗3三銀、☖3二金、☗4三桂には☖2一玉と逃げられ、今度は1筋が空いているのでもう捕まりません。
この持駒(金銀桂)で必死がかけられるのは、玉が2一と1一にいる場合のみです。
第2問正解 ☗3二銀
5図 |
6図 |
5図 ☗3二銀と玉の腹に打つのは寄せの手筋で、次に☗2三銀成の即詰めを狙っています。そこで、2三の地点を☖3四銀と守ると、今度は☗3一馬と下から王手をかけます。☖2一玉には☗2一銀不成までの詰み(6図)。
実戦にできやすい形なので、しっかり頭に焼きつけておいてください。
第3問 正解☗3一銀
7図 |
8図 |
7図 これで必死になっているなんて、不思議に思う方も少なくないでしょう。でも、これ以外に打ちようがないという意味では、やさしい問題でした。次に☗4二龍の一手詰めですが、後手の抵抗手段として、☖2四歩、☖4一金打、☖4一銀などが考えられます。でも、、いずれも次の手順で詰みます。
☖2四歩には☗4二龍、☖2三玉、☗2二龍まで。
☖4一金打には☗4二銀成、☖同金、☗3一金、☖2二玉、☗2一金、☖3二玉、☗3一龍まで。
☖4一銀には☗4二銀成、☖同銀、☗2二金(8図)、☖同玉、☗4二龍、☖3二金、☗3一銀まで。
頭の中ですべての変化を読み切るのは、中級者以下の方には大変でしょうが、将棋盤に並べてみれば難しい手は何一つありません。上の変化をじっくり研究して、頭に焼きつけてください。