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 歩三兵(上手二歩あり)の将棋

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「ふさんびょう」とは何者? ルールは?

 歩三兵(ふさんびょう)という将棋を聞いたことがありますか? 昔、子どもが大人(たいていは父親か祖父)に将棋を教わり、初めて対局をするときは、当然ながら上手にかなりのハンディキャップをつけなければならず、それが歩三兵だったのです。今では「ふさんびょう」は耳慣れない言葉になりましたが、漢字で書けばなんとなくわかりますね。

【1図】

1図 開始前の配置図です。上手の陣はなんと裸の王様が1枚だけ。そのかわり駒台に初めから歩が3枚あります。これだけで勝負しようというのですから、入門者をなめ過ぎていると思いませんか? ところがそうではないのです。歩三兵には特殊ルールがあって、禁手である「二歩」が上手だけには許されているのです。いや、二歩どころか「三歩」もOK!ですから、自分の歩の前後に、2つ歩を連打することだってできます。

 「二歩だろうが三歩だろうが、たかが歩でしょう? 飛車角銀桂香がそろっている下手の戦力はその何十倍あるか…」と考えるのは、まだ初段にほど遠い方です。まずは、開始図からの上手の手段を見てみましょう。

想像を超える、上手の巧妙な手段

1図からの指し手①
☖8六歩 ☗同歩 ☖8七歩
 

 【2図】
  【3図】
  【4図】

 上手が角頭の歩の前に歩を打ち、下手が同歩と取った時点で、すでにハマっています。☖8七歩と打たれると角が助からないことは、図に示さなくてもわかると思います。一度引っかかった人は、二度とこの手は食いません。でも、上手の巧妙な手段は、この壁を破った後に登場するのです。

 1図からの指し手②
☖8六歩 ☗7八金 ☖8七歩成 ☗同金
 (2図)


 ☗7八金は考えた手です。☖8七歩成に☗同金と取れるからです。これで上手は何もできないだろうと思っていると…

 2図からの指し手
☖8六歩 ☗同金 ☖8五歩 ☗同金 ☖8七歩 (3図)


 金の頭に歩の連打です。全部歩を取っていると、☖8七歩で角が助からなくなっています。☖8五歩に対して、☗8七金と下がると8六歩と二歩の権利を行使されます。また、☗8五同金で☗7六金や☗9六金と逃げるのも、同様に☖8七歩の二歩打ちが待っています。

 1図からの指し手③
☖8六歩 ☗7六歩 ☖8七歩成 ☗3三角成
 (4図)


 「少しばかりの損(☖8七歩成)はしかたない」と割り切って、角道を開け、☗3三角成と馬を作りました。実力差を考えれば、これが「次善の策」かもしれません。

 4図の後、下手が気をつけなければならないのは、☖6二王に☗4四馬…と王手をかけて追いかけ続けることです。上手の王が目指すのは、と金(8七)がいる方面。禁手の二歩、三歩が許される特殊ルールを駆使して王を守り抜かれると、実力差のある下手が勝つのは難しいでしょう。

 4図から下手が勝てなければ、王の寄せ方、詰め方を先に教わったほうがよいかもしれません。でも、歩三兵が好きな上手は、教えることよりも弱い人をいじめるほうが好きなのです。

「正しい打ち方」は初段でも難しい?

 何が正しい手なのかは難しい問題です。「より確実に勝てそうな手が正しい」と考える方が多いのではないでしょうか。でも、「最善を尽くして、圧倒的優位に立つのが正しい手だ」という考えも一理あります。たとえどこかで失敗して負けたとしても、将棋の上達を第一に考えれば、そうした険しい道を選ぶのも悪くないのかもしれません。

 1図からの指し手④
☖8七歩 ☗7八銀 ☖8七歩成 ☗同銀  ☖8六歩  ☗9八銀
☖8七歩 ☗7九角 ☖8八歩  ☗7八金 ☖8九歩成 ☗同銀 (5図)

 【5図】

 ポイントは二手目に銀を上がり、6手目、☖8六歩(二歩)に☗9八銀とそっぽのほうに逃げることです。この手は7八にスペースを作り、のちに☗7八金と守る手を用意したものですが、アマ初段クラスでも自力で発見するのは難しいでしょう。5図まで、手持ちが桂1枚だけになった上手の攻めは、切れています。

 5図までは、歩三兵の定跡になっているらしいのですが、超初心者がこれを覚えて使いこなすのは至難の業です。歩三兵は下手にとって、「八枚落ち」よりも勝つのが難しく、さほど勉強になるとは思えません。むしろ、上手が楽しむための特殊な将棋といってよいでしょう。


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