10枚落ち必勝法(定跡を知る)
なお、「10枚落ち」よりもハンデがきつい「19枚落ち(裸玉)」もありますが、一長一短です(「将棋入門>19枚落ちに勝つ」参照)。具体的には、19枚落ちが飛車(龍)1枚を駆使して王を追い詰めることができるのに対して、10枚落ちは飛車角(龍・馬)が連携することによって王を追い詰めるという、技術的な差があります。
また、心理的には相手がどんなに強かろうが、「王将一枚」というのは下手がちょっとへこみそうです。教える側の考え方や好みと共に、下手の技量の問題もあります。どちらが良いなどとは決めつけられません。
飛車角(龍・馬)連携で勝つ指し方
まず、角道を開ける(初手から)
☖4二玉、☗7六歩、☖5四歩 (1図)
駒落ち戦では上手が先手(記号は☖)になります。☗7六歩はこの一手で角道が開き、敵陣3三の歩を直射しています。☖4二玉はこの歩をあらかじめ守る手でした。☖5四歩も、下手が☗5五角から☗7三角成と馬を作る手を防いでいます。
【1図 ☖5四歩まで】
次に飛車先の歩を伸ばす(1図から)
☗2六歩、☖7四歩、☗2五歩、☖9四歩 (2図)
角の次は飛車を使う準備をします。飛車先の歩を2五まで伸ばしている間、上手は歩を突いて左右に王の逃げ道を作りながら、様子見です。
【2図 ☖9四歩まで】
飛車を浮く。その狙いは?(2図から)
☗2六飛、☖7五歩、☗同歩、☖1四歩 (3図)
ここで☗2六飛と浮き、次の一手で本定跡の攻めの形が完成します。それを見越して上手は☖7五歩と歩を突き捨て、一転☖1四歩とこちらにも逃げ道を用意しました。さて、下手の次の一手は?
【3図 ☖1四歩まで】
飛車を振って、角筋と照準を合わせる(3図から)
☗3六飛、☖5三玉 (4図)
正解は☗3六飛。3三の歩を直射し、なおかつ角の筋も同じ地点に照準が当たっています。上手の守る駒は玉のみですから、単純な数の攻めで破られます。そこで上手は☖5三玉と逃げる一手。
【4図 ☖5三玉まで】
初王手。角を先に成る(4図から)
☗3三角成、☖6四玉 (5図)
この場合は、飛車よりも先を優先させて成ります。その理由は、☖6四玉と逃げられた後、うまい手があるからです。分かりますか?
【5図 ☖6四玉まで】
上部に逃がさない馬の王手(5図から)
☗4二馬、☖7三玉 (6図)
玉は中央方面に逃がすと、なかなか詰めづらいものです。特に、7五の歩を玉で取られると広くなります。そこで☗4二馬が正解。☖7三玉と下にもどして、次はいよいよ飛車の出番です。
【6図 ☖7三玉まで】
飛車が成る(6図から)
☗3一飛成、☖8四玉 (7図)
飛車を一段目に成り、左方面に移動して挟み撃ちをする狙いです。
上手玉は、王手のかかりづらい上部に逃げました。ここで龍で王の背後に迫りたいのですが、7筋~9筋のどこでしょうか?
【7図 ☖8四玉まで】
龍を背後に回して挟み撃ち(7図から)
☗7一龍、☖8五玉 (8図)
☗7一龍と背後に回るのが早い寄せです。上手が自信たっぷりに、☖8五玉とかわした振りをしたとしましょう。でも、そんな手にはひっかからないでください。
【8図 ☖8五玉まで】
守りを兼ねたとどめの一手(8図から)
☗7四龍、☖7六玉、☗3八金(9図)
☗7四龍と王手をかけて、ほぼ終わりです。なおも、上手は力試しを兼ねて☖7六玉と入ってきますが、ここで勝ちを急いではいけません。王手をかけなくてもよいのです。☗3八金と自陣を守っておけば、次に☗7七金で詰みます。
【9図 ☗3八金まで】
上手投了
上手玉は四方八方どこにも動けません。次に☗7七金で詰みますが、それを阻止する手もありません。上手の投了です。
(おわりに) 定跡を覚えるには、実際に将棋盤に並べるのが一番です。ただし、機械的に丸暗記してもさほど役には立ちません。上手が本定跡どおりにやってくるとは限らないからです。大事なことは、定跡の一手一手の狙いや意味を知ることです。序盤、中盤、終盤の流れをつかむことで、将棋の感覚が身についてくるでしょう。
次は⇒ 10枚落ち必勝法2(もう一つの勝ち方)
★駒落ち将棋関連ページ
八枚落ち、六枚落ちに勝つ序盤の指し方
19枚落ち(裸玉)に勝つ―王の追い詰め方